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☆週刊☆ 経営いろは帖 Vol.221 2007/06/04 毎週月曜日発行

執筆・発行/株式会社総合教育研究所 石橋正利
http://www.sk-k.co.jp
http://www.sogokyouiku.com/ (ブログ)
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新しい夜明けのための指針 −三愛精神−
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 私はやっと、つい最近、自分がなぜリコーでサラリーマン時代を送った
のかが分かったように思います。それは、リコー三愛グループの創業者で
ある市村清さんの説いた「三愛精神」との再会です。
 「三愛精神」こそが、機能でしかない今の組織を人間らしい組織へ復活
させる鍵だと言うことに気付いたからです。

 昭和21年12月、グループ機関誌「三愛」の巻頭として書かれた「三愛精神」
について、市村清さんは次のように書いています。

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 西郷隆盛は「天を敬い、人を愛す」と言った。私は、あえて「三愛」と言う。
あの有名な西郷さんとくらべられたいとは思わないが、「人を愛し、国を愛し、
勤めを愛す」という三愛精神は、私の生涯の信念である。

 人間は万物の霊長といわれるが、人間ひとりひとりの価値は、人によって
見方が異なる。学者が偉いと思う者もいるし、政治家、芸術家、財界人の
ほうが偉いとする考え方もあろう。そのいずれにもせよ、真に人間の偉さを
決定するものは、その人の持つ「愛」の深さと広さではないだろうか。

 すべての動物に自己保存があるように、人間も本能的に自己を愛する。
下等な人間でも、自分だけは愛している。平凡な人間になると、妻子を愛し、
両親を愛し、兄弟を愛する。すこし上等な人間になると、隣人愛にめざめ、
次には民族を愛し、祖国愛となり、さらに進めば世界の全人類を愛する。
それがなおも徹底すれば、すべての動植物、ありとあらゆるものを自分と
同じように愛し、ついには自己以上に愛するようになる。そのためには、
自分を犠牲にしても惜しくない大きな愛の高まりにまで徹する。
 この境地は、すでに佛であり神であろう。お釈迦さまやキリストがそれで
ある。このように、愛の深さと広さとが、どのくらいの段階に達しているか、
それがその人間の本当の価値を決定するものであると確信する。・・・・・

 私の提唱する三愛主義とは、人を愛し、国を愛し、勤めを愛する精神である
から、世界人類の一員として、まずすべての人を愛すること。日本人としては、
祖国日本を愛すること。そして自己がこの世に生をうけた意義を果たすため、
自分にあたえられた任務を愛して一生懸命にはげむこと。

 三愛主義こそ唯一救国の大道である。日本の全国民が三愛の精神に燃えたつ
ならば、日本国はますます栄えると信じる。
 「三は万物を生じる」の三愛精神は、どのような場合にも通用する。事業に
ついて言うならば、社員を愛し、資本を愛し、事業そのものを愛する。利益が
あれば、社員と、資本と、事業全体の運営改善のために、それを三分して使う。

 教育について言うなら、教師を愛し、生徒を愛し、学問そのものを愛すること
である。生活を楽しむなら、衣、食、住を心から愛するがよい。
 自己を磨くときは、過去を反省し、現在を努力し、未来に希望を抱いて、その
すべてを愛し感謝する。私はかねてから、この三愛の精神を信じ、三愛主義と
名づけて、それを生涯の信念として実行してきた。事業の上でも「三愛」を
商号とするのは、いよいよ自己の信念に忠実でありたいと願うからである。

 私の愛してやまない社員諸君、今後とも三愛の精神に徹して、日本の発展に
全力を傾けようではないか。
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 私は14年間をリコーの社員として過ごしましたが、残念なことに、この素晴
らしい「三愛精神」を職場の仲間と語り合った記憶がありません。やっと58歳
の今になって、市村清さんの熱い精神が胸に染み渡るようになりました。涙が
自然に頬を伝います。

 私が33歳の時に、「何のために自分は働いているのだろう」という疑問に、
日夜悩み続けた答えが、市村清さんの説いた三愛精神の一節「自己がこの世に
生をうけた意義を果たすため、自分にあたえられた任務を愛して一生懸命に
はげむこと」に既に書かれていたにも関わらず、未熟な私は気付くことが
できなかったのです。

 戦後の荒廃した日本を立て直そうとした市村清さんの志は、いつの間にか忘れ
去られ、日本社会がモノだけの豊かさに偏っています。愛を忘れた組織や家庭は
珍しくはなく、心の触れ合いが消えた人間関係が原因で、多くの人が心を病む
ようになりました。

 ソニーの創業者である井深大さんの「自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」
の精神も、本田技研工業の創業者である本田宗一郎さんの「作って喜び、売って
喜び、買って喜ぶ」存立の精神も、戦後の日本製品の品質を高めてくれた恩人で
あるデミング博士の「Joy of Work(仕事を楽しむ)」哲学も、すべての根底に
流れる思いは、仲間やお客様への愛です。愛がもたらす喜びこそが、人間らしい
家庭や職場を実現します。

 「人を愛し、国を愛し、勤めを愛する」三愛精神は、リコー三愛グループだけの
ものではありません。人間らしい組織を復活させる、新しい夜明けの扉を開いて
くれる精神として大切にしていきたいものです。

(文責:株式会社総合教育研究所 石橋正利)

★次号予告★
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次回は、『奈良毅先生のご講話 −個人・集団・人類と地球−』です。
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