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☆週刊☆ 経営いろは帖 Vol.262 2008/03/17 毎週月曜日発行

執筆・発行/株式会社総合教育研究所 石橋正利
http://www.sk-k.co.jp
http://www.sogokyouiku.com/ (ブログ)
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高畠導宏さんの生涯 −エミリー・ディッキンスンの詩−
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 今年の1月にNHK「土曜ドラマ」で放送された「フルスイング」の
原作になった「甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯」を
読んでみました。作者の門田隆将さんが、エピローグで紹介されていた
エミリー・ディッキンスンの詩(アレンジしています)をまず読んで
ください。

 もし私が一人でも傷ついた心を救ってやることができるなら
 私の生きることは無駄ではないだろう
 もし私が一人でも悩める人を慰めることができるなら
 あるいは一人でも苦痛を癒すことができるなら
 あるいは一羽の弱っている駒鳥を助けて
 その巣の中に再び戻してやることができるなら
 私は無駄に生きてはいないだろう

 正にこの詩のような人生を生きた高畠導宏さんこそ、一市民の生き方の
モデルになると思います。好んで色紙に書いたと言われる「覚悟に勝る
決断なし」を、身をもって生きたことが伝わってきました。

 彼は、鳴り物入りでプロ野球の世界へ入団したけれど、ケガで満足な
結果が残せないまま、退団せざるを得なかったのですが、コーチとして
の才能を野村克也氏に見いだされ、若くして28歳で打撃コーチとなり、
多くの首位打者を育てました。

 高畠導宏さんが、亡くなる三か月前の講演で語ったコーチの哲学は、
リーダーとしてメンバーを育てる立場にある者によって、忘れては
ならないメッセージとなりました。

 「私は、コーチになる時、よーし、ほめまくってやろう、選手をほめて、
ほめて、ほめまくってやろうと思ったんですよ」

 「プロの世界に入ってくる人間は、必ずどこかにいいところがある。
人より優れたところがなければプロには入ってこられません。だから
私は、人より優れているその部分を徹底してほめようと思いました。
以後30年、私は一度も選手を怒らずに通してきました。その方が、選手は、
はるかに成長するからです。だから、私のコーチ時代というのは、本当に
選手をほめまくった30年だったと思います。」

 そして、コーチが選手に投げかける言葉の重さに気づいたことを、この
ように語っています。

 「ピッチャーがフォアボールを連発している時でも同じです。真ん中に
投げろと、コーチや監督はよくいいますが、実はこれが一番辛いんですね。
だって、コントロールが乱れてフォアボールを連発しているのに、真ん中
に投げろと言われたって、困るだけじゃないですか。そういう時は、
ピッチャーの意識をストライクを投げることから、逆に外してあげる必要が
ある。そうすれば、ピッチャーがどのくらい心理的に楽になるかわかりません。
 たとえば、真ん中に投げろではなく、思いきって腕を振っていこうとか、
そういう言い方をすればどうでしょうか。その意味では、野球界には、実は、
危険なアドバイスが氾濫していると思います。そこで私は、心理の勉強を
本格的にしなければならないと思ったんです。」

 その彼が、「子供たちに生きる力を与える仕事ができないだろうか。
頑張ればきっと望みはかなうということを教えたい」という思いが強くなり、
50歳代なかばで、5年もかけて教職免許を取得し、新前の高校教師として
赴任したのが還暦を目前とした59歳でした。

 新任教師として始業式の挨拶で、こう決意を語っています。

 「私は、教師になりたい、という夢を持っていました。コーチは選手を
育てます。教師は生徒を育てます。夢を持って突き進めば、あきらめずに
やっていけば、夢は達成できるものです。コーチ時代、通信教育をやって、
挫けながら、数年かかって私はやっとその夢を実現しました。・・・・・
 私は、プロ野球とはきっぱりと縁を切って、ここで骨を埋める覚悟で
君たちと一緒にやっていきます。みなさんの将来の糸口を探す手助けをする
ために、命をかけてバックアップさせてもらいたいと思います。」

 「命をかけて」と語る高畠導宏さんの覚悟に、身が震える思いがします。
今日から、私も残りの人生を「命をかけて」という覚悟で、使命を果たす
ことに邁進します。

(文責:株式会社総合教育研究所 石橋正利)

★次号予告★
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次回は、『採用適性分析から見えてくる人財像(2)
      −どういう関心事・興味領域をもっているか−』です。
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