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☆週刊☆ 経営いろは帖 Vol.300 2008/12/08 毎週月曜日発行

執筆・発行/株式会社総合教育研究所 石橋正利
http://www.sk-k.co.jp
http://www.sogokyouiku.com/ (ブログ)
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経営革新に成功するための組織づくりPart2(2)
               −魚が飛んで成功がやってきた−
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 前号に引き続き、「経営革新に成功するための組織づくりPart2」を
お届けします。
 今回は、パイク・プレイス魚市場の社長のヨコヤマさんに、“ビジョン”と
“適切な人”との関係、市場で起きた“適切でない人”が“適切な人”へ変わって
いった場面[ケース1]、残念ながら、そのまま職場から退場していった場面
[ケース2]を語ってもらいましょう。(出典:魚が飛んで成功がやってきた)

■“ビジョン”と“適切な人”との関係

「私たちは魚を売る人間を探しているのではない。自分自身の行動に責任が
とれ、常に世界的に名高いパイク・プレイス魚市場を実現しようとするチーム
の仲間が欲しいのだ。私たちは、最初のうちはビジョンについてはあまり語ら
ない。新人はとにかくわが社の企業文化に投げこまれる。未来の従業員には、
まず初めに、チームをつくらなければならないこと、それからチームの一員に
なるためには、成長する大きな可能性を持っていなければならないことを教える。
 スタッフとして採用された後は、私は、スタッフ全員と一週間おきに会っている。
スタッフをディナーに連れていき、ビジョンについて話し合い、ビジョンに参加
するよう誘い、そのビジョンをしっかり持ちつづけられるようにしている。」

[ケース1]

「こともあろうにベテランの店員がクリスマスの大忙しのさ中に、私のところ
へやってきて言った。『聞いてくれよ。この連中には、やり方が全然わかって
ないんだ。大混乱だよ。何もかもめちゃめちゃだ。こいつらは役立たずだ。自分
のしていることがわかっていないんだから』。遮るように私は言った。『黙れ。
おまえはいま、自分の心のなかでいったいどんな会話をしていたんだ? おまえ
にそんな口をきかせているケチな了見をいま一度よく考えてみろ』。『わかったよ』
と彼は即座に答えた。そこで私は『自分のためにどんな新しい会話ができる?』と
彼に尋ねた。まさにこの瞬間、彼は仲間たちに対する自分の在り方を変える決心を
したのだと思う。その証拠に彼は次のような新しい会話を選んだ。『みんなすばらしい
仲間たちだ。これからは、何事も順調に優れたやり方で進めていけるだろう』。
私はこの店員が心のなかの内なる声を改めたとき、彼自身が劇的に変わったのを
知った。」

 たとえ、その場に、社長のヨコヤマさんがいなかった場合でも、「コーチし合う」
文化をもっているこの組織は、メンバーの誰かが、ビジョンに合わない「責任を他人
に転嫁する」行動に対して、コーチしたことでしょう。

[ケース2]

「かってわが社のスタッフだったある男は、世界的に有名になるというわが社の
理念をどうしても理解できなかった。彼は自分が下した他人に対するネガティブな
評価を正しいと信じきっていた。自分の願望や欲望、判断を抑えて、サービスを
するということができず、やがてあるとき、客を怒鳴りつけてしまった。彼の行為は、
私たちの描くビジョンからあまりにもかけ離れていたために、仲間たちもそれ以上、
彼をチームに置いておくわけにはいかなくなってしまった。」

 “ビジョン”への参加はきれいごとではありません。お金を稼ぐだけなら、いくら
でも楽な仕事はあるのです。本当に、社会性の高い“ビジョン”に共感し、参加したい
と思える仲間は、それなりの人間性をもつ“適切な人”なのです。私自身、振り返って
みると、三十代半ばまでは、自分の売上数字しか考えない“不適切な人”だったなあ。
やっと、最近 “適切な人”の意味が身体で分かってきたかなと思えるほど、未熟な
ビジネスマン人生を送ってきたのです。パイク・プレイス魚市場のような、自分自身を
見つめ、相手の意見に耳を傾け、人間的に成長していこうとする仲間が集う職場を日本
中につくりたいと強く思います。「そんな職場で、若い日の自分を磨きたかったなあ」
・・・独り言。

 経営品質受賞企業の中でさえ、時には、トップが変わると、変えてはならないはずの
“顧客本位・社員重視・独自能力・社会との調和”を追求する経営品質の考え方が弱く
なってしまったという声が聞こえてきます。そんなことが起こらないためにも、“適切な
人”が集まった組織づくりの大切さをコリンズさんとヨコヤマさんは、教えてくれています。

■社会的な使命感

 コリンズさんは、以前から「アメリカの経営者の経営姿勢に対し、『利益は目標では
なく結果である』という視点が揺らいでいる」と警鐘を鳴らしていたそうですが、今日
の金融危機は、正に、その警鐘が現実になったことは誠に残念です。その面でも、
“偉大な企業”を創った経営者が、水道哲学の松下幸之助さんのように、“社会的な
使命感”によって経営を行おうとする強い意志を一貫して持ち続け、その結果、資産を
得たことは、うれしい限りです。

 本来、日本企業の原点も、近江商人に代表されるような、「売り手よし、買い手よし、
世間よし」という“三方よし”の商人道にあったはずです。「自社の企業活動を、社会
全体の幸福につながるものにする」という強い決意をもつリーダーが居てこそ、「組織が
目指す理想的な姿」に魂が入るのですから、ぜひ、そんなリーダーをめざしたいものです。

 では、どうしたら“偉大な企業”を創った経営者のように、“社会的な使命感”をもつ
ことができるのでしょうか? その一歩が、組織が掲げる“ビジョン”に参加するか、
しないかを判断する決め手となる個人としての“ビジョン”の存在です。(つづく)

(文責:株式会社総合教育研究所 石橋正利)

★次号予告★
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次回は、『経営革新に成功するための組織づくりPart2(3)
             −組織ビジョンと個人ビジョン−』です。
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